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【2勝98敗の男と現代ニッポン】齋藤憲三の志と、ものづくりの行方を考える

けっこう前のことですが、まだ秋田に住んでいた1998年ごろ、地元ABS秋田放送が制作したノンフィクションドラマを見た記憶があります。主演は藤岡弘さん。描かれていたのは、齋藤憲三氏の波乱に満ちた人生でした。

齋藤憲三氏とは誰か──実は秋田県にかほ市出身で、TDKの創業者です。フェライトという素材と出会い、その実用化を目指してTDKを立ち上げたのが“1勝目”。その後、政治家として科学技術庁を創設したのが“2勝目”。しかし、その前後には数々の挫折や失敗、そして失意の時期もありました。

そんな彼の人生を象徴するように、ドラマのタイトルは「2勝98敗の男」だったと記憶しています。秋田ローカルだったのか、東北限定だったのか、それとも全国放送だったのかは定かではありませんが、当時は非常に興味深く見ていました。

TDKの創業者が秋田県出身だと知ったのも、実は大人になってから。「へぇ、そうだったんだ」と驚いたのを覚えています。秋田県の由利本荘地区にはTDKの工場が集積しており、農業と漁業が中心だった地域に産業の基盤を築こうとした齋藤氏の志は、今思えば本当にすごいことだったと思います。

さて、話は現代に戻ります。先日、TDKが3工場の閉鎖を発表し、協力会社との契約解除のニュースが流れました。協力会社の多くはTDKへの依存度が高く、この地域経済への影響は計り知れません。

さらに深刻なのは、日本を代表する電機メーカー──パナソニック、シャープ、ソニーなどが軒並み大幅な赤字に陥っていることです。円高や東日本大震災など、複合的な要因があるとはいえ、新聞やニュースから受けるダメージは非常に大きく、「ものづくりニッポン」はどこへ向かうのかと考えさせられます。

かつては、松下もソニーもシャープも、時代を牽引する商品を次々と生み出していました。しかし今は、そうした“旗印”となる製品が見当たりません。私自身も含めて、みんなで踏ん張らなければならない時代なのかもしれません。

それにしても、閉塞感と事なかれ主義が蔓延する現代ニッポン。かつては「2勝98敗」のような大きな負け越しも受け入れられる社会でしたが、今はひとつの失敗すら許されない空気が漂っています。芸能界から企業、個人に至るまで、ひとつの事例に対するパッシングの激しさは目を覆いたくなるほどです。

このような世間では、新しい波はなかなか生まれません。アイホンもグーグルもフェイスブックも、次の時代をつくるようなものは、今の日本からは発信できないのではないか──そんな危機感すら覚えます。

では、どうするか。みんなで考えていくしかありません。今日はこのへんで。明日は日曜日、お休みです。