四方山話に時々音楽と高校野球

高校野球・浜省推し・スピリットは1980年代

見ざる聞かざる言わざる それでもあの夏は永遠に語り継がれる

 

心情は見ざる聞かざる言わざる

 

金足農業の夏の甲子園100回大会の準優勝は、地域にとっては歴史的な多大な功績。逆転スリーラン・ツーランスクイズ・豪速球の絶対エース、それだけ100回大会甲子園準優勝はインパクト抜群でした。報道後のTwitterやヤフコメで上がってくるのは、秋田県外の高校野球アカウントと高校野球とは無縁のユーザーばかり。

地元メディアをはじめとする報道や社説はあるものの、多くの秋田県民のこの件についての心情は、 おそらく「見ざる聞かざる言わざる」?この度の不祥事の報道では、びくともしない地域の金農パワーを見せつけられます 。

近年、記憶にある過去もっとも厳しい処分は愛媛 済美高校の事案。それと比較すると3ヵ月はあっという間。しかも報道後の実質期間はさらに短い。一冬越せば多くの人にとっては、おそらく過去の出来事。ネット上でも、この話題は既にフェードアウトしつつあります。

済美いじめ「悪質」1年間対外試合禁止 - 高校野球ニュース : nikkansports.com

 

詳細説明がない学校と受け取る地域

詳細説明がない学校側の対応から、いじめ、暴力の細かな経緯や背景は不明。先日の酒田南の喫煙問題での出場辞退とは真逆な対応。

高校野球の持つ地域への影響力を考慮するなら、この件の責任者・代表者がきちんと説明責任すべきことではあるものの、秋田県で甲子園の活躍が名実共にNO.1であり、県民から最も支持されているチームのこと。

県民栄誉賞まで受賞した野球部を、できればそっとしておきたいことも心情的には理解できます。

100年に一度の夏の甲子園での快進撃から決勝進出へ熱狂する地域。(当然 おっさんもその一人)。今では負の要因であるはずの昭和からの不条理な部活のあり方も、勝てば官軍で都合が良くないことは蓋がされることも地方の特徴。

郷に入れば郷に従えか・・・。地元有力者一族とスクールカーストが続く背景となれば、そりゃ県外流出も止まらないのも仕方がない。

もっとも昭和の部活での不条理は日常茶飯事で、指導者からの体罰や言葉の威嚇など全く無かったチームは皆無。熱狂の中で担がれた御輿や舞台は、いとも簡単に世間から梯子を外されてしまうのが、この時代なんだろうけど。

昭和へのノスタルジー

一方で昭和の時代を懐かしむ方は、野球界をはじめ沢山います。YouTubeでプロ野球引退後の選手達のchannelをいつも興味深く視聴しています。取り上げられるテーマの中に、当時の部活の不条理・体罰 やプロ野球界での様々な裏話が面白い。

第一話 愛甲さん登場 「俺の周りは不良しかいなかった」 - YouTube

これを今の時代に照らし合わせると、ほとんどが法令違反、コンプライアンスNGの事例ばかり。それを語る彼らは、ノスタルジーにひたり笑いのなかで当時を懐かしむ。

これ、この世界だけではなく一般社会でも同じです。企業や職場の昭和の慣習を令和に照らし合わせると、ほとんどがハラスメントに該当し、コンプライアンスNG。それでも当時その渦中にあったおっさん達は、どこかでその不条理さを懐かしみ、その話題で盛り上がります。

全国の多くの強豪私学を撃破し、甲子園準優勝した地方の公立の農業高校・金農の存在は大きい。戦力面でも、一人のエースを中心とした固定したレギュラー先発で臨んだ地方大会から甲子園での全国大会。戦術面からもスクイズが必殺技。

準V当時に発売された名著「金農燃ゆ」に書かれて紹介されていた事例は、裏を返せばこの度の件の要因が潜んでいることをもあらわしています。時代背景とルール改正も、もう二度とこんなチームは出てこない。それゆえに、金足農業のこの度の出来事は、昭和の高校野球の終焉を見た気がします。

優先されるはルールと法令順守だけ

ただ、高校野球100年の歴史の経過するなかで、国も社会も人も変わってしまいました。根性・義理人情の前に、優先されるのは社会のルール・法令遵守。

不条理な環境の中で育つと、耐性だけは強くなります。終盤の逆転勝ちが真骨頂の金農の野球を支えていたのは、まさにこの力だったのでは。そして長年継承されたこのアイデンティティーを脱ぎ捨てることを、はたしてこのチームにできるのか ?

未来創造プロジェクト発足 | 金足農業高校野球部OB会

今夏、東北初の優勝旗をもたらしたのは、仙台育英。複数の投手陣と厚い選手層。全国屈指の練習設備と優秀な若き指導者・コーチ陣も充実。令和の時代の甲子園で優勝するには、これだけの条件が必要不可欠。

いじめと体罰が無い指導の部活に移行するには、まだ暫く20年ほどの代替わりの時間が必要。悪しき不条理な縦社会とブラック企業並みの指導を受けていない世代が、指導者の主力となるまで・・・。

けれどこんな時代だからこそ、時に奇跡のチームがみてみたい。金足農業は奇跡のチーム。この先変わりゆく未来の中でも、地元では永遠に語り継がれることでしょうけど。