四国4県での一人営業は広域営業のはしり
――高松を中心に広がる商圏の濃淡と、土地との距離感

一県一営業所体制が生んだ「地方営業」のリアリティ
昇降機メーカーでの営業は、基本的に「一県一営業担当者」という体制で成り立っていました。
複数の担当者が配置されるのは東京・大阪・名古屋といった大都市圏のみで、その他の地方では営業所そのものが一県に一つしかありません。
つまり地方営業とは、必然的に「一人で一県を背負う仕事」だったのです。
その中でも四国4県と北海道は特異で、地域全体で営業所が一つしか存在しませんでした。
四国の場合は商圏人口と地理的条件から高松市に営業所が置かれ、担当者は4県すべてを一人で受け持つことになりました。
この体制こそ、後に経験する広域営業の原型だったと感じています。
高松を中心に同心円状に広がる商圏の濃淡
幸か不幸かはさておき、四国の商圏は高松市を中心に同心円状に濃淡が生まれる構造をしていました。
4県を担当しているとはいえ、仕事量は均一ではありません。
最も濃いのは香川県で、案件数も密度も高く、日々の動きも高松を中心に回っていきます。
徳島・愛媛は距離に応じて仕事量が薄まり、高知は地理的な遠さがそのまま営業機会の少なさに直結していました。
地図上では広域担当でも、体感としては「高松を中心に濃い円があり、外側に向かうほど薄まる」という構造です。
この濃淡の感覚を身体で覚えたことが、後の広域営業の判断軸につながっていきました。
名前しか知らなかった土地へ向かう日々
それでも遠方の県に仕事がまったくないわけではありませんでした。
年に数回は、室戸岬や四万十川近郊といった、名前だけしか知らなかった土地の現場にも足を運びました。
高松から見ればまさに地図の端で、移動距離は長く、道中の風景はどこか旅のように感じられました。
海沿いの道を延々と走り続ける室戸岬への道。
四万十川の流れがゆっくりと視界を横切る高知西部の風景。
県境を越えるたびに変わる建物の雰囲気や人の距離感。
こうした遠方の現場は、仕事量としては少なくても、四国という土地の「広さ」と「多様性」を実感させる場でした。
そして、広域営業とは距離そのものを仕事として受け止めることだと、静かに教えてくれたのです。
広域営業のはじまりとしての四国経験
四国4県を一人で抱えるという体制は、単なる担当範囲の広さではなく、土地の文化・距離・案件密度を総合して受け止める営業の姿勢を求められました。
この経験は、後に東北で広域を担当する際にも大きな基盤となりました。
高松を中心に広がる商圏の濃淡、遠方の土地との距離感、そして一人で背負う責任の重さ。
四国での一人営業は、まさに私の営業観を形づくる「広域営業のはしり」だったと今でも感じています。