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【昇降機メーカー編 ㉒】昇降機30年の現場から県境をまたぐと常識が変わる?小荷物専用昇降機ローカルルールの激動期を振り返る

 

 【昇降機30年の現場から】県境をまたぐと常識が変わる?小荷物専用昇降機ローカルルールの激動期を振り返る


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こんにちは。昇降機・建築設備業界に身を置いて約30年、主に新設の現場を歩んできた技術者です。

建築基準法は日本全国共通の法律ですが、実は「設備」の現場、特に小荷物専用昇降機(ダムウェーター)の世界には、都道府県ごとに驚くほど異なる「ローカルルール(施行細則)」が存在します。今回は、私が経験した東北、兵庫、そして四国への異動と、法律が全国一律化していくまでの激動の「過渡期」の裏話をお届けします。

 東北の「常識」が覆った兵庫への転勤

 

時計の針を2006年(平成18年)当時に戻します。この年は、業界を揺るがしたエレベーター事故などが起き、安全管理への意識がガラリと変わり始めた転換期でした。

当時、東北6県におけるダムウェーターの確認申請や定期検査報告の扱いは、見事にバラバラでした。岩手・秋田・宮城・福島の4県では、「人が乗らない設備だから」と、床面と同じ高さに開口部がある「フロア型」も、高さのある「テーブル型」も、どちらも申請・報告の対象外。一方で、青森県や山形県だけは、独自に厳しい安全基準を設けて申請を義務付けていたのです。

私は山形での勤務を経験した後、神戸のある兵庫県へと異動になりました。そこで直面したのは、それまでの東北の「出さなくていいエリア」の常識とは180度違う、超厳格な審査の世界でした。

兵庫県(神戸)は、阪神・淡路大震災を経験していることもあり、建築設備の安全審査が全国屈指で厳しい地域です。フロア型であれば、ダムウェーター1台を設置するだけでも確認申請と定期報告が必須。「もし自分が、申請不要な秋田からいきなり兵庫に異動していたら、実務のギャップに大混乱していただろう」と、山形での経験に心から感謝したのを今でも覚えています。

 四国での「一息」と、嵐の前の静けさ

その後、私は四国へと異動になります。兵庫での書類と審査に追われる日々から一転、当時の四国各県の細則は国の一律基準に準拠しており、小荷物専用昇降機への縛りは比較的緩やかなものでした。

兵庫で培った厳しい基準から解放され、現場がスムーズに回る心地よさに、実務の上でも「ようやく一息入れられた」というのが当時の率率な心境です。しかし、この穏やかな時間も、実は全国的な大改正へ向かう「嵐の前の静けさ」に過ぎませんでした。

 地方のバラつきを終わらせた「全国一律化」の波

地方自治体の裁量によってこれほど違っていたルールですが、国がついに重い腰を上げます。全国の学校や飲食店で、フロア型ダムウェーターへの挟まれ事故が相次いだことを重く見た国は、2016年(平成28年)の法改正により、「フロア型はどこにあろうが、全国一律で確認申請・定期報告の対象とする」という大号令を出したのです。

四国で一息ついたのも束の間、すぐにこの「全国一律化」という過渡期の荒波が押し寄せてきました。周囲の技術者たちが「えっ!フロア型も申請が必要になるのか!?」と戸惑う中、私は不思議と冷静でした。「ああ、あの兵庫や山形でやってきた厳しい基準が、ついに日本のスタンダードになったんだな」と、手の内が分かっていたからです。

 最後に:激動の過渡期を渡り歩いて見えたもの

同じ日本、同じ建築基準法の下で動いているはずなのに、県境を一つまたぐだけで、昨日までの常識がガラリと変わる。それが当時の昇降機業界の恐ろしさであり、プロとしての腕の見せ所でもありました。

あちこちのローカルルールに一喜一憂しながら全国を回っていたら、最後は法律のほうが自分たちの経験(兵庫や山形の厳しさ)を追いかけてきて、全国が一つに統一された――。

激動の過渡期と異動が重なった私のキャリアは、書類の手間こそ多かったものの、日本の昇降機が「より安全なインフラ」へと進化していく歴史の縮図を、最前線で体験できた貴重な財産だと思っています。