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史家語り 甲子園の「ふるさと紹介」は地域史である──横手高校が全国に見せる故郷

史家語り 甲子園の「ふるさと紹介」は地域史である──横手高校が全国に見せる故郷

 


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甲子園には、試合以外にも記録されるものがある

高校野球の甲子園中継には、試合そのものとは別に、もう一つの楽しみがある。

NHKの「ふるさと紹介」である。

出場校のある町を短い時間で紹介し、その土地の風景、文化、産業、暮らしを映しながら、最後に高校へとつなぐ。

一見すれば、単なる試合前のスポット紹介である。

しかし、私はそうは思わない。

これは、その時代の地域を映した小さな地域史の記録である。

何を紹介するのか。

どんな風景を映すのか。

その町を象徴するものとして、何を選ぶのか。

そこには、その時代の「この町はこういう町だ」という地域の自己紹介が表れる。

平成4年、能代は「木材の町」だった

私が今でも鮮明に覚えている「ふるさと紹介」がある。

平成4年、1992年の夏。

能代高校が甲子園に出場した大会である。

そのとき、NHKは能代を「木材の町」として紹介した。

これは私の記憶に今でも残っている。

しかし、平成4年の能代は、すでに木材産業の全盛期ではなかった。

戦後、能代の町を支えてきた木材産業は衰退の時代に入っていた。

それでも、木材を扱う技術、木工、職人の文化、そして「木都・能代」という町の記憶は残っていた。

産業としての木材が衰退していく中で、それまで培ってきた文化を残していこうという時代でもあった。

だからこそ、NHKが全国の視聴者に見せた「木材の町・能代」という姿には意味があった。

それは現在の産業規模を説明したものではない。

能代という町が、何によって形づくられてきたのかを伝えたのである。

ふるさと紹介は、その時代の町を切り取る

町は変わる。

産業も変わる。

人の暮らしも変わる。

しかし、町には簡単には消えない記憶がある。

かつて栄えた産業。

受け継がれてきた祭り。

土地に根付いた食文化。

歴史的な町並み。

そして、そこで暮らしてきた人々の記憶である。

NHKの「ふるさと紹介」は、そうしたものの中から、その時代にふさわしい「故郷の顔」を一つ選び出して全国に見せる。

だから、同じ町でも時代によって紹介されるものは変わる。

平成4年の能代が「木材の町」だったことは、まさにその時代の能代を記録している。

そして34年後。

2026年の横手高校である。

横手なら、何を見せるのか
横手には素材が多い。

だからこそ、どれを選ぶのかが面白い。

私なら、かなりベタに作る。

まずは横手公園から見た横手の町並み。

城から市街地を見下ろし、その向こうに横手盆地が広がる。

これが横手という町の基本形である。

そこから冬へ移る。

かまくら。

雪国・横手を象徴する伝統行事である。

さらに現代へ移る。

横手やきそば。

近年、B級グルメとして全国に知られるようになった横手の新しい顔である。

そして最後に、横手高校。

歴史ある学校が、半世紀ぶりに夏の甲子園へ出場する。

これでいい。

いや、これがいい。

見下ろす町並み、雪、食、そして高校。

横手という町の歴史と現在を、短い時間で見せることができる。

 

横手の風景は「案山子」の世界にも重なる

私の中にある横手の町のイメージは、単なる観光地の風景ではない。

さだまさしの「案山子」に出てくるような、故郷の風景である。

もちろん、歌の舞台が横手という意味ではない。

しかし、遠くへ出ていった人間に故郷から語りかける、あの歌の世界には、横手の町を重ねてしまう。

横手公園から町を見下ろす。

その先に市街地があり、さらに横手盆地の田園が広がる。

その向こうには山がある。

派手な都会ではない。

しかし、そこには長い時間をかけて人々が暮らしてきた町がある。

横手高校が甲子園に出るということは、その町そのものが全国中継に登場するということでもある。

だから「ふるさと紹介」は、単なる高校のPRではない。

その高校が存在する地域そのものを全国に記録する時間なのである。

34年前の能代から、今年の横手へ

平成4年。

能代高校が甲子園に出た。

NHKは「木材の町・能代」を全国に見せた。

そして2026年。

横手高校が久しぶりに夏の甲子園に出る。

今度は横手が全国中継に登場する。

34年という時間が流れている。

その間に、能代の木材産業はさらに姿を変えた。

横手もまた変わった。

しかし、町の歴史は消えない。

むしろ、何を残し、何を新しい顔として見せるのかによって、その時代の地域像が浮かび上がる。

だから私は、8月11日の「ふるさと紹介」を楽しみにしている。

かまくらが出るのか。

横手やきそばが出るのか。

予想外の十文字ラーメン?

横手公園からの風景が出るのか。

あるいは、まったく別の「横手」が登場するのか。

答えは、試合で分かる。

8月11日、答え合わせである
横手高校の初戦は8月11日。

その試合前、NHKが全国の視聴者にどんな横手を見せるのか。

私はそれを一つの地域史の答え合わせとして見る。

2026年の横手には、2026年の横手にしかない「故郷の顔」がある。

それをNHKがどう切り取るのか。

そこに、その時代の横手が記録される。

高校野球は、球児たちの戦いを記録する。

しかし、その背後には必ず故郷がある。

そして甲子園中継は、その故郷まで全国に映し出す。

だから「ふるさと紹介」は、単なるスポット紹介ではない。

それもまた、甲子園が残していく地域史なのである。

8月11日。横手高校の試合開始当日。

そして、答え合わせはそこにある。