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【百貨店編 ⑮】百貨店という世界の中で完結していた若手時代

百貨店という世界の中で完結していた若手時代   ―1988〜1990年を振り返って―

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三点セットが揃った、あの短い時期

振り返ると、私の人生で「ゴルフ・スキー・歓楽街」という三点セットが揃っていたのは、1988年から1990年頃のわずかな期間だけでした。百貨店に勤めていた若手時代、仕事の熱量と同じくらい、遊びにも勢いがあった時代です。バブルの空気が街に満ち、職場の人間関係も濃く、日々の生活そのものが“百貨店マンらしさ”に包まれていました。

先輩に誘われて早朝からゴルフ場へ向かい、冬になればスキーに連れ出され、仕事終わりには歓楽街へ流れていく。そんな生活が自然に続いていました。いま思えば、あれは時代そのものが作り出した空気だったのだと思います。

 

合間にあった草野球という“素の時間”

華やかな三点セットの合間には、同僚たちと草野球をする時間もありました。これは少し素朴で、肩の力が抜けた時間でした。百貨店の若手同士が集まり、休日の朝にグラウンドへ向かう。ユニフォームもバラバラのまま、ただ白球を追いかけるだけの時間が、妙に心地よかったのを覚えています。

草野球は、仕事の延長でもありながら、どこか“自分の原点”に戻れるような場所でもありました。あの頃の私にとって、数少ない“素の自分”を取り戻す時間だったのかもしれません。

休日の遊びもすべてが社内で完結していた

百貨店の勤務体系は土日が休みではありませんでした。シフト制で働く以上、世間の休日とはズレていく。すると自然と、遊びの相手も職場の仲間に限られていきます。ゴルフもスキーも草野球も、そして夜の街へ繰り出すのも、すべて同じ職場の人間たちでした。

恋愛もまた例外ではありません。当時は社内結婚が本当に多く、生活圏そのものが職場に閉じていたのです。勤務体系が人間関係の幅を決め、人生の選択肢までも形づくっていた時代でした。いま振り返ると、仕事も遊びも恋愛も、すべてが“百貨店という世界”の中で完結していたのだと実感します。

そして今、三点セットは一つも残っていない

あれほど濃密だった三点セットは、いまの私の生活には一つも残っていません。
ゴルフもスキーも歓楽街も、草野球でさえも、すっかり過去のものになりました。
生活のリズムも価値観も変わり、静かに自分のペースで過ごす時間が中心になっています。

しかし不思議なもので、失われたという感覚はありません。
むしろ、あの時代を通り抜けたからこそ、今の静かな時間を自然に受け入れられているのだと思います。

あの頃の自分に、いまの自分を伝えたら

もしタイムトラベルができるなら、1988年頃の自分に会いに行ってみたいと思うことがあります。ゴルフバッグを担ぎ、スキー板を車に積み、夜は同僚と街へ繰り出していたあの頃の私に、いまの自分を伝えたらどうなるでしょうか。

「いまはスマホ一つで、毎週のようにブログを書いているよ。
あの三点セットは、いまは一つもやっていないよ。」

そう言ったところで、きっと訳がわからないでしょう。スマホという言葉すら存在せず、文章を書くことが自分の生活の中心になるなど、想像もしていなかったはずです。

けれど、あの濃密な日々があったからこそ、いまの静かな創作の時間があるのだと思います。百貨店という閉じた世界の中で過ごした若手時代は、いま振り返ると、人生の基礎体力のようなものを育ててくれた時期でした。