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戦国秋田、序列崩壊の夏──名門の旗、相次いで落つ


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2026年夏  秋田大会序盤

秋田の高校野球界に、いつもとは少し違う夏の幕が上がった。

第108回全国高校野球選手権秋田大会。

史家は例年通り、この夏の記録を残すべく戦場へ向かう準備をしていた。

しかし開幕日の朝、思わぬ出来事が起きた。

長年共に戦ってきた前歯のブリッジが外れたのである。

「これは何かの前触れなのか」

もちろん、そんな因果関係などあるはずもない。

ただ、高校野球の歴史を振り返れば、人は時として偶然の出来事に物語を重ねる。

そして、その日の秋田大会は、まさにそんな一日となった。


名門の旗、初陣に散る

大会2日目。

秋田の勢力図を揺るがす結果が次々と飛び込んできた。

第一シード秋田商業。

秋の王者明桜。

昨夏準優勝、春準優勝の第2シード鹿角。

いずれも夏の主役候補と目されていた諸侯である。

しかし、夏の戦場は無情だった。

秋田商業は秋田工業の前に敗れる。

明桜は新屋との激戦に敗れる。

鹿角も湯沢との延長10回タイブレークの死闘の末、姿を消した。

一方で、第3シード秋田修英は快勝。

第4シード大曲工業は延長タイブレークを制して勝ち上がった。

大会前に描かれた勢力図は、わずか二日で大きく書き換えられた。

秋田の夏は、早くも戦国の様相を呈している。


秋田県の第1シードは信用できない

高校野球ファンの世界には、時として歴史が生む格言が存在する。

この日、SNSで史家の目に留まった言葉がある。

「秋田県の第1シードは信用できない」

(毎夏の風物詩)

続いて、

「秋田県の第2シードも信用できない」

(もはや何も信じられない)

思わず苦笑した。

しかし、秋田大会を長く見続けてきた者なら、その気持ちも理解できる。

春の王者が夏に敗れる。

秋の王者が初戦で姿を消す。

優勝候補が次々と散っていく。

そんな光景を、我々はこれまで何度も見てきた。

だからこそ高校野球は面白い。

だからこそ予想が当たらない。

そして、だからこそ甲子園への道は尊いのである。


夫人、明桜の旗を見届ける

この日、夫人は明桜を応援するため球場へ赴いた。

普段は史家とは別の陣営に立つ。

史家は能代松陽。

夫人は明桜。

本来であれば、両校は三回戦で激突する可能性があった。

その場合、家庭内軍事同盟は一時停止となる。

夫婦それぞれが別の軍旗を掲げ、戦況を見守ることになっていたはずである。

しかし、夏は筋書き通りには進まない。

明桜の夏は、ここで終わった。

試合後、夫人はSNSでこう発信した。

「初戦敗退です⚾」

「3年生ありがとうございました🌸」

「これまで勝ち上がってる全ての高校さん次も頑張ってください。次があるっていいものです。」

短い文章だった。

しかし、その一文一文には敗者だけが知る重みがあった。

特に、

「次があるっていいものです。」

という言葉が印象に残った。

勝ち上がる者には次がある。

だが敗れた者にはない。

高校野球の厳しさと美しさが、その一文に凝縮されているように思えた。

史家が期待する、この先の戦国秋田

さて、ここで史家は予想を語らない。

予想は専門家に任せればよい。

そもそも、わずか二日で第一シード、第二シード、秋の王者が姿を消した大会である。

今さら誰が未来を断言できようか。

しかし、期待することはできる。


まず一つ目は、新たな主役の誕生である。

甲子園への道は強豪校だけのものではない。

毎年どこかで新しい物語が生まれる。

これまで脇役だった学校が主役となり、校歌を歌い、歓喜の輪の中心に立つ。

高校野球の魅力はそこにある。


二つ目は接戦の連続である。

鹿角対湯沢。

由利対大曲工業。

どちらも延長10回タイブレークまでもつれた。

今年の秋田大会は例年以上に実力が接近しているように見える。

絶対王者不在。

どの学校にも勝機があり、どの学校にも敗戦の可能性がある。

まさに戦国時代である。


三つ目は、スタンドにいる人々の物語である。

応援席で声を枯らす吹奏楽部。

炎天下で声援を送る保護者。

敗戦後、静かに荷物をまとめる三年生。

高校野球の主役は選手だ。

だが、その周囲にも数え切れない物語が存在する。

史家はそれも記録していきたいと思う。


史家、再びこまちへ向かう

 

土曜日、史家は歯科医のもとへ向かう。

失われた前線の再建である。

そして日曜日。

史家と夫人は、こまちスタジアムへ向かう予定だ。

本来であれば、能代松陽と明桜の三回戦を楽しみにしていた。

しかし、その未来は消えた。

ならば残された未来を見届けよう。

それが高校野球ファンというものだ。

明桜の旗は降ろされた。

しかし秋田の夏は続いている。

夫人は今度、家庭内軍事同盟の一員として能代松陽を見守ることになるだろう。

果たして歯の治療は間に合うのか。

能代松陽は勝ち上がるのか。

もちろん二つに因果関係はない。

だが、高校野球の神様は時として人々に物語を語らせる。

夫人は明桜の敗退を見届けた。

史家は前歯を失った。

そして秋田大会は序列を失った。

だが、夏そのものは失われていない。

次に何が起きるのか。

史家には分からない。

しかし一つだけ確かなことがある。

2026年夏の秋田大会は、まだ始まったばかりである。