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【百貨店編⑪】お歳暮プロジェクトがくれた“逃げ道”——物流センターでのリセット体験

お歳暮プロジェクトがくれた“逃げ道”——物流センターでのリセット体験

 

 

若手が集まる“臨時チーム”の空気

入社一年目、売場の空気に馴染めず、毎日が重く沈んでいました。接客の緊張、仕事のプレッシャー、上司の視線——そのすべてが肩にのしかかり、このままでは心も体も壊れてしまうのではないかと感じていました。そんなとき、私を救ってくれたのが、年末恒例のお歳暮プロジェクトでした。

百貨店にとって、お歳暮は年間でも最大級の繁忙期です。贈答品の需要が一気に高まるこの時期、各部署から若手社員を中心に臨時のプロジェクトチームが編成されます。当時、配送センターは新子安にあり、本館8階の催事場が“お歳暮ギフトセンター”として稼働していました。

ギフトセンターでは、通常の人員では到底足りません。包装、梱包、仕分け、配送——そのすべてを支えるために、物流センターにも多くの応援要員が集められました。シーズンアルバイト、内定者、他部署の同期や先輩たち。普段は交わることのない人たちが、同じ空間で汗を流す日々が始まりました。

売場から離れられたことがくれた“救い”

売場の“業”から一時的に離れられたことは、私にとって何よりの救いでした。接客の緊張も、売上の数字も、上司の視線もない。ただ目の前の作業に集中し、黙々と手を動かす。その単純さが、張りつめていた心をゆっくりとほどいてくれました。

そして何より、「ここにいていい」と思える空気がありました。誰もが一時的な“寄せ集め”だからこそ、上下関係も薄く、自然体でいられる。昼休みに交わす他部署の同期との会話が、どれほど心を軽くしてくれたか、今でもよく覚えています。

物流センターで感じた“居心地の良さ”

その後、お中元の時期にも同様のプロジェクトに参加しました。店舗の華やかさとは無縁の、ざっくりとした“倉庫”の世界。しかし私は、この空間に不思議な居心地の良さを感じていました。

たとえば、エレベーターひとつとっても、店舗では展望のあるシースルーの乗用エレベーターが客を迎えますが、物流センターではフォークリフトがそのまま乗り込める大型の荷物用エレベーターが稼働していました。段差解消機、垂直自動搬送機、仕分けライン——物流のための設備が整い、そこには“現場の機能美”がありました。

このときの記憶が、後に私が転職することになる昇降機メーカーでの仕事に思いがけずつながっていきます。当時は「なぜ荷物用と乗用が並列で設置されているのか」と不思議に思っていましたが、今では法令や安全基準の観点から説明できます。あの現場で見た動線やレイアウトが、後の仕事のイメージの土台になっていたのです。

“逃げ道”が静かに示していた未来

あの頃の私は、そんな未来を想像すらしていませんでした。ただ売場から離れられることに安堵し、目の前の作業に没頭していただけでした。しかし今振り返れば、あの“逃げ道”は単なる一時避難ではなかったのだと思います。

自分の適性を知り、次の道への伏線を張る——そんな静かな転機が、あの物流センターには確かにありました。