【百貨店編⑤】百貨店の中に存在する“見えない壁”と部門の序列

店舗を支える多層的な部門構造
百貨店というと、華やかな売り場や丁寧な接客が思い浮かびます。しかし、実際に働いてみると、その裏側には複雑な部門構造と、越えがたい“見えない壁”が存在していることに気づかされます。私が若手として働いていた頃、日々の業務を通じてその壁の存在を痛感しました。
私が勤めていた百貨店には、大きく分けて三つの領域がありました。
- 内販営業部(売場)
婦人服・紳士服・食品・雑貨など、フロアごとに細かく分かれ、百貨店の“顔”ともいえる部門です。
- 外販営業部(外商)
個人外商と法人外商に分かれ、顧客の自宅や企業を訪問して営業活動を行います。
- スタッフ部門(販売推進・広報・総務など)
売上計画、販促企画、人事、経理など、店舗運営の基盤を支える部門です。
表向きは一つの大きな組織ですが、実際にはそれぞれが異なる文化と価値観を持ち、独自の力学で動いていました。
売場の中にも存在する“序列”
内販部門の中にも、明確な序列がありました。
最上位に位置づけられるのは、婦人服や高級ブランドなどのファッション部門。売上規模も大きく、華やかさもあり、まさに“花形”の売り場です。
次に続くのが、食品フロア。動員力が高く、百貨店の集客を支える存在です。
そして、雑貨・家庭用品・文具・玩具などは“その他大勢”。私が配属されたのも、この「その他大勢」の一角でした。売場の雰囲気や扱う商材の性質から、社内での存在感はどうしても控えめになりがちでした。
外商部門の中で突出する“法人外商”
外商部門にも序列がありますが、その頂点に立っていたのは法人外商部でした。
法人外商は、贈答品の販売にとどまらず、企業の制服、ノベルティ、備品調達、さらには建物の内装まで手がける“総合商社”のような存在です。扱う金額も桁違いで、社内での発言力も圧倒的でした。
若手の私から見ると、法人外商はまさに“猛威をふるう”存在で、同じ会社の中でも別世界のように感じられました。
すべての上に立つ「販売推進部門」
そして、内販・外商のさらに上に位置づけられていたのが販売推進部門です。
売上計画の立案、販促企画、イベント統括など、百貨店全体の戦略を描く司令塔。旧日本軍にたとえるなら、大本営や軍令部のような存在で、内販が陸軍、外商が海軍といった力関係がありました。
販売推進部門に配属されることは、将来の幹部候補としての道を歩むことを意味していました。
“選ばれた人”は入社前から決まっている
驚いたのは、花形部門やエリート部門への配属が入社前からほぼ決まっているという事実でした。
採用段階で「誰をどこに置くか」がある程度決まっており、現場でどれだけ努力しても越えられない壁が存在する——若手の私は、その空気を肌で感じていました。
百貨店は一つの建物の中に多様な文化が共存する“縮小された社会”のような場所です。その中で自分の立ち位置をどう見つけ、どう働くか。私は戸惑いながらも、少しずつ“組織で働く”ということの意味を学んでいきました。
次回予告:次は、百貨店に入社する新卒の特徴と“縁故入社”という記事となります。