10人目の選択肢と二刀流の行方──能代松陽とDH制度の功罪

2026年春から高校野球に本格導入されるDH(指名打者)制度は、投手の負担軽減や打撃特化選手の出場機会創出など、多くのメリットがあるとされています。一方で、「第二の大谷翔平」のような二刀流選手が育ちにくくなるという懸念もあります。
秋田県の公立校・能代松陽高校は、この制度によって最も恩恵を受ける可能性が高いチームのひとつです。打撃力と継投力を兼ね備えた構成は、DH制度との相性が非常に良く、制度が“はまれば”県内公立校の中で突出した存在になることが期待されます。
2025年秋季大会では、能代松陽4強進出するなど、打線の厚みと複数投手による継投策が光りました。特に注目すべきは、主力投手陣の打撃成績が控えめである点です。これは、DH制度によって「打席に立たずに済む」ことが、精神的・体力的な負担軽減につながる構造を持っていることを意味します。
また、守備に不安がある打撃特化選手がベンチに控えている場合、DH枠によって彼らが“戦力化”される可能性も高まります。能代松陽は、制度変更によって最も恩恵を受ける公立校のひとつといえるでしょう。
DH制度の功としては、投手の故障リスク軽減、打撃専任選手の出場機会創出、継投策の自由度向上、戦術の多様化などが挙げられます。能代松陽のように、打撃力と継投力を兼ね備えたチームにとって、DH制度は戦術の解放でもあります。
一方で、DH制度の罪としては、二刀流選手の育成が難しくなる点が挙げられます。投手が打席に立たなくなることで、打撃経験が減少し、指導者も分業を前提とした育成方針に傾きやすくなります。チーム事情によっては、打撃力のある投手でもDHを使われる可能性があり、結果として「第二の大谷翔平」が育ちにくくなる構造が生まれます。
ただし、制度が選手の可能性を広げるかどうかは、選手のやる気と指導者の哲学次第です。制度は枠であり、その枠の使い方が未来を決めます。
能代松陽は、制度と構成が噛み合えば“化ける”可能性を秘めています。ですが、それはあくまで選手のやる気と指導者の選択が前提です。制度は可能性を広げる道具であり、制限する壁ではありません。
「打てるなら出してやりたい」
「投げることに集中させたい」
「両方やりたいなら、枠を空けておく」
そんな言葉が、制度の功罪を超えて、選手の未来を照らすのではないでしょうか。
今春導入、高校野球のDH制 神奈川の監督はどう見る、戦術や起用に変化も センバツ | カナロコ by 神奈川新聞