石綿事前調査制度は“善意”で守れるのか──見えない違反と制度の盲点

2022年から義務化された「石綿事前調査結果の電子報告制度」。
100万円以上の解体・改修工事では、GビズIDを通じて調査結果を報告することが法律で定められています。
制度の目的は明確です。石綿(アスベスト)による健康被害を未然に防ぐため、調査の実施と報告を徹底すること。
しかし、制度の運用状況を静かに観察していると、ある種の違和感を覚える場面があります。
■ 善意に依存する制度の限界
この制度は、自己申告制です。
つまり、調査を実施したかどうか、報告したかどうかは、事業者の善意に委ねられているのが実情です。
行政による全件チェックは現実的に困難で、違反が発覚するのは、外部通報や内部からの指摘があった場合に限られることがほとんどです。
ある地域の建設業界の動向を見ていても、工事件数に対してGビズIDへの登録件数が極端に少ない事業者が存在することに気づくことがあります。
これは制度の周知不足なのか、それともチェック機能の限界なのか──。
いずれにせよ、“見えない違反”が温存される構造があることは否めません。
■ なぜ“見えない違反”が起きるのか
この制度には、「報告していないことが外からは見えない」という構造的な盲点があります。
たとえば、建設業者ごとの登録件数は公表されておらず、発注者や元請が下請の報告状況を確認する仕組みも不十分です。
結果として、「やっていないことがバレない」状況が温存され、制度が形骸化するリスクを抱えています。
■ 必要なのは“軽いストレス”という仕組み
私は、制度に「軽いストレス」を組み込むことが必要だと考えています。
それは罰則の強化ではなく、“見られている”という健全な緊張感を生む仕掛けです。
たとえば──
・事業者別の登録件数を公表する(同意があれば可能なはずです)
・自治体の入札情報とGビズ登録の突合チェックを行う
・元請・発注者に報告確認の義務を課す
・業界団体が定期的に登録状況を共有・啓発する
こうした仕組みがあれば、「やっていないと目立つ」「比較される」という空気が生まれ、制度が“生きた仕組み”として機能するのではないでしょうか。
■ 誰かを責めたいのではない
私は、誰かを責めたいわけではありません。
ただ、制度が守られていないかもしれない現場があるという現実を、静かに見つめている人間として、問いを投げかけたいのです。
石綿による健康被害は、過去のものではなく、今もなお続いています。
制度が形だけで終わらないように、現場の声を制度に届ける仕組みが必要だと、私は思います。
結び:
制度を守るのは、善意だけでは足りない。だからこそ、見える仕組みが必要だ。
「制度を守るのは、声の大きさではない。静かに問い続ける人の背中に、制度の重みは宿る。」