2011年12月の三連休。年末の静かな時間に、しばらく綴っていなかった高校野球の話題を振り返ってみたくなりました。
高校野球は今、オフシーズン。だからこそ、この時期は“ムカシ話”にふさわしい。記憶の奥に残る「一球」「一打」「一投」を、何回かに分けて綴ってみようと思います。
夏の甲子園大会歌『栄冠は君に輝く』(作詞:加賀大介/作曲:古関裕而)の2番には、こんなフレーズがあります。
一球に 一打にかけて
青春の 賛歌をつづれ
ああ 栄冠は 君に輝く
この歌詞の通り、球児たちは一球にすべてをかけてきました。そんな場面を、まずは私の小学校時代にさかのぼって振り返ります。
■1969年(昭和44年)第51回選手権大会 決勝戦
三沢高校 vs 松山商業高校(延長18回)
この試合は、東北勢が初めて優勝旗に手が届きかけた歴史的な一戦でした。スコアは延長18回まで両校無得点。まさに死闘。
【ランニングスコア】
松山商 0 0 0 0 0 0 0 0 0|0 0 0 0 0 0 0 0 0|0
三 沢 0 0 0 0 0 0 0 0 0|0 0 0 0 0 0 0 0 0|0
三沢高校の15回裏、満塁でフルカウント。打球は投手の横にワンバウンドで飛び、投手・井上が飛びつくも弾いてしまいます。ライナーに見えたため、三塁走者・菊池のスタートが遅れ、ショートが本塁へバックホーム。走者はフォースアウト。
後に読んだ書籍で、松山商の監督が「このプレーが松山商と三沢の差だ」と語っていたのが印象的でした。紙一重の判断、そして一瞬の動きが勝敗を分けた場面でした。
■1973年(昭和48年)第45回選抜大会 準決勝
広島商業高校 vs 作新学院高校
この試合は、作新学院の江川卓投手が無失点記録を更新中だったピーク時の一戦。広島商は8回裏、2死からダブルスチールを敢行。捕手の悪送球により、二塁走者が生還し勝ち越し点を奪います。
【ランニングスコア】
作新学院 0 0 0 0 1 0 0 0 0|1
広島商業 0 0 0 0 1 0 0 1 X|2
試合前、広島商・迫田監督は「ノーヒットで江川を倒す」と語っていたそうです。まさに機動力が超高校級投手を打ち破った瞬間でした。
この試合でも、「一球にかける」覚悟と、「一打に託す」戦略が見事に結実した場面でした。
今回は、昭和40年代の名場面を中心に振り返りました。次回は、中学時代以降の記憶から、さらに印象深い試合を綴ってみたいと思います。
高校野球は、記録よりも記憶に残るスポーツ。そしてその記憶は、時を経ても色褪せることなく、私たちの心に響き続けます。
では、また。